霊芝多糖はドーパミン性ニューロンを護り、パーキンソン病を予防する

人の脳は、筋肉を動かす為にドーパミンという神経伝導物質が必要です。ドーパミンを産生する「ドーパミン性ニューロン」が大量に退化、もしくは死亡した場合、ドーパミンが不足し、『手足が無意識に震えるパーキンソン病』を引き起こします。従って、ドーパミン性ニューロンは、パーキンソン病を防ぐ為の最も重要な物質となります。

文/許嘉玲   中文版/請連結

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人の脳は、筋肉を動かす為にドーパミンという神経伝導物質が必要です。ドーパミンを産生する「ドーパミン性ニューロン」が大量に退化、もしくは死亡した場合、ドーパミンが不足し、『手足が無意識に震えるパーキンソン病』を引き起こします。従って、ドーパミン性ニューロンは、パーキンソン病を防ぐ為の最も重要な物質となります。

2016年6月<American Journal of Neurodegenerative Disease>に中国中医科学院とオーストリアのウィーン獣医大学が共同発表した研究結果によると、霊芝多糖の抗酸化作用は神経毒によるドーパミン性ニューロンへのダメージを軽減する働きがあります。

この研究では、二種類の神経毒を使用して行いました。一つ目はMMP+(1-メチル-4-フェニルピリジニウム)といい、この神経毒はドーパミン性ニューロンを標的に破壊し、実験用のマウスやサルが人のパーキンソン病と似た症状を発症するため、パーキンソン病の実験によく使われています。二つ目はロテノンといい、天然の植物の根や茎に含まれ、殺虫効果があります。人や野生動物、鳥類に対する毒性が低い為、昔は殺虫剤や殺魚剤、農薬として幅広く使われていました。しかし、近年の研究によると、長期間ロテノンを使用している農民がパーキンソン病を罹患する確率は通常の人の2.5倍だと言われています。

研究者はマウスの脳から腹(ふく)側(そく)被(ひ)蓋(がい)野(や)(中脳の一部、ドーパミン性ニューロンはここに分部)の組織を取り、二つの神経毒(MMP+、ロテノン)を別々に入れて48時間培養しました。この二つの神経毒は、元々3割~6割のドーパミン性ニューロンを死亡させることが可能ですが、培養と同時に霊芝多糖の抽出物(50、100㎍/mL)を入れると、ドーパミン性ニューロンをMMP+とロテノンから護り、ダメージを3割も減らすという結果が見られました。

この二つの神経毒(MMP+、ロテノン)はドーパミン性ニューロンの神経繊維を短くします。神経繊維は神経細胞から延びる細長い突起物で神経細胞の一部です。活動電位の伝導に加え、神経終末と細胞体との間の物質交換に役立ちます。神経繊維が長ければ長いほど伝達が良く、それに対して短いと伝達に問題が生じます。

この実験によって、霊芝多糖は神経毒(MMP+、ロテノン)の神経繊維に対する悪い影響を軽減するだけでなく、霊芝多糖の量が100㎍/mLに増えると、ドーパミン性ニューロンの神経繊維の長さはほぼ正常の状態と変わらなくなるということがわかりました。(下記の図に参照)

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(出典/Am J Neurodegener Dis. 2016 Jun 1;5(2):131-44. eCollection 2016.

 

神経毒(MMP+、ロテノン)がドーパミン性ニューロンを破壊する原因は、酸化ストレスの増加が細胞内のミトコンドリアにダメージを与えるためです。ミトコンドリアはエネルギーを作る大切な役割がある為、もし正常に働けなくなった場合、細胞は自ら壊死することになります。今回の研究結果で、霊芝多糖はミトコンドリアの機能を正常に維持し、細胞の壊死する量を減らすことが分かりました。

霊芝のドーパミン性ニューロンに対する効果は「損傷防止」だけではなく、神経毒がない状態でドーパミン性ニューロンに霊芝を投与した場合、ニューロンの数と神経繊維の長さが増加することが証明されました。

ドーパミン性ニューロンの大量死亡は、パーキンソン病の原因であることが判明されて以来、霊芝はパーキンソン病を防ぐポテンシャルがあることが今注目されつつあります。

 

〔出典〕Guo SS, et al. Ganoderma Lucidum polysaccharides protect against MPP(+) and rotenone-induced apoptosis in primary dopaminergic cell cultures through inhibiting oxidative stress. Am J Neurodegener Dis. 2016 Jun 1;5(2):131-44. eCollection 2016.